分譲マンションの大規模修繕工事は、どのように進めたらよいのでしょうか?
通常、修繕工事は内容に応じた施工会社に発注して行いますが、主体はあくまで管理組合です。
管理組合は、的確な準備を進め、区分所有者の合意のもとに修繕工事を実施するために、次のことを基本に対応していくことが重要です。
民主的かつ公平で公開された議論
大規模修繕工事には、区分所有者は多額の費用を支払うことになり、また居住者の生活に大きな影響を与えることになります。このため、工事の実施には、様々な考え方を持つ区分所有者の合意と共に、賃借人等の居住者の協力も必要となります。多くの人が関わるため、常に民主的かつ公平で公開された議論を積み重ねることが重要です。
特に、費用負担の問題は、合意形成の過程において、大きな議論の対象になると考えられます。修繕工事のための費用は修繕積立金でまかなうことが基本ですが、もし不足する場合は、客観的で丁寧な説明と共に、アンケート調査を行うなど、各所有者にとって無理のない費用負担に留意し、合意形成を図ることが求められます。
分かりやすい情報提供
大規模修繕工事の実施に係わる事項は、区分所有者の方々にとって、日頃なじみのないことばかりと考えられます。このため、工事の必要性や、具体的な工事の内容、費用負担の内容、また工事の実施に伴う生活への影響とその対応方法等について、分かりやすく適切な裏付けのある資料を作成し、所有者に提示することが必要です。また、広報誌を定期的に発行したり、適時、アンケート調査を行うなどの工夫も大切です。
総会等の的確な実施
下図の通り、修繕工事の完了までには、実施に向けての準備に始まり、調査に基づく具体的な計画内容の検討と決定、施工会社の選定と契約、工事の実施、そして完了まで様々な段階を経ることになります。このような修繕工事の各段階において、総会の決議により区分所有者の合意を得ながら的確に進めていくことが必要です。
なお、追加工事の承認等の軽微な内容に関する承認については、あらかじめ理事会の判断に委ねておくことも考えられます。また、大規模修繕委員会を設置した場合、その役割と権限について事前に承認を得ておく方が、計画・実施段階の打合せが円滑に進められます。
管理組合
大規模修繕委員会の設置
コンサルタントの選定と承認
コンサルタント業務委託契約の総会決議
全体スケジュールの承認
基本設計の承認
工事実施の総会決議(実施計画の承認・施工会社の承認)
工事請負契約の締結
使用材料、色彩等の承認
追加変更、精算工事の承認
竣工検査を経て竣工の引受け
工事完了及び決算案の承認決議
(長期修繕計画見直し等による修繕積立金の改定の承認)
理事会のリーダーシップ
このような対応の中心的役割を担うのは理事会です。理事会は、区分所有者の意向を集約しながら大規模修繕工事に係わる様々な検討を行い、その結果を分かりやすくまとめ、総会に提出して所有者の合意を形成する役割を担います。具体的な工事内容等の専門的な事項に関する検討は、外部のコンサルタントなどの専門家に委託することになりますが、総会に諮る議案の検討・作成は理事会が行います。このように、修繕工事の実施にあたっては、積極的に所有者を取りまとめていく理事会のリーダーシップが欠かせません。